クリスマス・イブが近づくにつれ、高まる期待と現実の狭間で要の心は鬱いていた。一方、鏡にとって、イブは狂おしいほど愛しい姉の帰国の日。 鏡は、他人には決して見せる事のない無垢な笑顔で姉を出迎えた。姉は変わらぬ笑顔で鏡に応えながらも、ずうずうしいほど天真爛漫な第三者……付き人の千早を紹介するのだった。見せつけるように姉にまとわりつくその存在に、鏡はとまどいを隠せない。 そんな鏡を「遊び」だす姉。抗えない鏡。 だが、千早が大事な思い出にまで踏み込んでこようとした時、鏡の中で何かがはじけた……。華やいだ聖夜の夕闇、教会の前で呆然と十字架を見つめる鏡を、要が見つけたのは偶然だった。要の部屋に通され、窓の外見つめる鏡の唇がゆっくりと開いた。 「名前を……僕の名前を呼んでよ……」
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